【公共コンサルと政策の視点】 全国自治体における窓口開庁時間短縮の実施状況―全国269事例の集計分析(2026年9月1日時点)(松田睦己)(2026年9月4日)
1.はじめに
調査対象は全国の基礎自治体(1,741自治体)である。自治体の公式ウェブサイトや例規、報道発表、議会資料等を根拠に、恒常的または試行的に平日窓口の開庁・受付時間を短縮した事例を収集した。なお、本調査は2026年9月1日時点の情報であり、公開情報をもとに事例収集しているため、調査漏れがある可能性に留意いただきたい。窓口短縮実施に向けて求められる観点やポイントについては、「単なる"営業時間変更"で終わらせない窓口開庁時間短縮のすゝめー全国179事例の調査結果を踏まえた考察」『地方財務(2026年3月号) 』で整理しているため、併せてご覧いただきたい。
2.実施状況と運用段階
調査した269事例のうち、現在実施中は229件(85.1%)、実施予定は40件(14.9%)である(図表1)。運用段階では、本運用167件(62.1%)、試行82件(30.5%)、実施予定20件(7.4%)となった(図表2)。本運用が過半を占める一方、試行を通じて住民への影響等を検証する事例も一定数確認できる。
図表1 実施状況別の実施件数

図表2 運用段階別の実施件数

出典:図表1・2ともに自治体公表資料を基に日本政策総研作成
3.開始時期
(1)開始年
開始年を確認できる事例では、2026年が174件で最多となり、2025年69件が続く(図表4)。2025年以降の開始は248件で、確認可能な事例の92.5%を占める。導入が近年に急速に集中したことが分かる。
図表3 開始年別の実施件数

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(2)開始月
開始月は10月46件、1月44件、4月33件の順に多い(図表4)。年度・暦年の切替、下期の開始など、運用変更の節目に合わせた導入が多いと考えられる。ただし、月別分布のみから導入理由を断定することはできない。
図表4 開始月別の実施件数

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(3)開始年度×期間
4月始まりの年度単位でみると、2026年度4〜6月が56件で最も多く、2025年度1〜3月が44件、2026年度7〜9月が39件と続く(図表5)。
図表5 開始年度×期間別の実施件数

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
2024年度は25件、2025年度は104件、2026年度は135件である(図表6)。なお、2026年度には基準日後に開始する予定事例が含まれるため、実施済み件数とは区別して解釈する必要がある。
4.都道府県別の状況
(1)都道府県別実施割合
都道府県ごとに、「各都道府県の実施自治体数÷各都道府県の基礎自治体数」で実施割合を算出した。実施予定を含む実施割合は、滋賀県57.9%、愛知県53.7%、千葉県48.1%、岐阜県47.6%、兵庫県43.9%の順に高い(図表6)。実施割合の全国平均15.5%に対し、上位地域では自治体間の普及が面的に進んでいるといえる。
図表6 都道府県別実施割合 上位10都道府県

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(2)都道府県別の実施件数
都道府県別の実施件数でみると、愛知県が29件で最多、次いで千葉県26件、岐阜県20件、兵庫県18件、埼玉県15件が上位となった(図表7)。件数と該当率では順位が異なるため、地域比較では双方を併用することが適切である。
図表7 都道府県別実施件数 上位10都道府県

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
5.短縮後の窓口時間
(1)開始時刻
短縮後の開始時刻は9:00が210件(78.1%)で突出して多く、8:45が39件(14.5%)、8:30が17件(6.3%)で続く(図表8)。始業直後の内部事務時間を確保する設計が広く採用されている。
図表8 短縮後の窓口開始時刻

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(2)終了時刻
短縮後の終了時刻は16:30が138件(51.3%)で最多であり、17:00が57件(21.2%)、16:00が49件(18.2%)で続く(図表9)。開始時刻に比べて終了時刻の選択肢は分散している。
図表9 短縮後の窓口終了時刻

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(3)1日あたりの短縮時間
短縮時間は61〜75分が98件(36.4%)で最多となった。平均は67.6分、中央値は75分、最大は165分である(図表10)。最大値には昼休み閉庁を含む事例があり、開始・終了時刻の差だけでなく、実際の受付可能時間で算出している。
図表10 1日あたり短縮時間の分布

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
(4)短縮方法
開始繰下げと終了繰上げを組み合わせる方式は234件(87.0%)で、終了繰上げのみの32件(11.9%)を大きく上回る(図表11)。窓口前後の双方に内部事務時間を確保する設計が標準的である。
図表11 短縮方法別の事例数

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
6.実施目的
(1)実施目的パターン
収集した事例をもとに開庁時間短縮の目的パターンを図表12のとおり整理した。
図表12 実施目的パターン
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労務是正・働き方改革 |
超過勤務の解消、労務管理の適正化 |
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市民サービス向上 |
丁寧な応対、待ち時間削減、サービスの質向上(※単なる“低下しない”説明ではなく、向上を目的化している場合) |
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チャネルシフト・DX促進 |
オンライン申請、コンビニ交付等の普及 |
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業務品質・内部統制の担保 |
事務ミス防止、処理・後工程・準備片付け、業務の標準化、会計処理等 |
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施設運営・体制最適化 |
出先機関含む業務実施体制見直し、開庁時間・問合せ体制等の再設計 |
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経費削減 |
超勤手当等の削減(※「労務是正・働き方改革」を目的に掲げている事例のうち、超勤手当削減等の表現を明示している事例) |
出典:日本政策総研作成
(2)目的分類
目的分類について、実施目的が確認できる140事例を対象に集計(確認できない事例は除外)した。「労務是正・働き方改革」が113件(80.7%)、「市民サービス品質向上」が112件(80.0%)で並ぶ。「チャネルシフト・DX促進」も71件(50.7%)を占める(図表13)。職員側の働き方と住民側のサービス品質を同時に追う構図が確認できる。
図表13 目的分類別の該当割合

出典:自治体公表資料を基に日本政策総研作成
7.おわりに
今回の集計結果から、窓口開庁時間の短縮は、近年急速に普及するとともに、9時開始、16時30分終了、開始繰下げと終了繰上げの組合せといった一定の運用モデルへ収れんしつつあることが確認された。一方、標準的な時間設定を採用するだけでは、働き方改革や市民サービス品質の向上が自動的に実現するわけではない。
今後の主要な論点は、開庁時間を何分短縮するかではなく、確保した時間をどの業務へ再配分し、その結果として業務品質、職員の働き方、住民の利便性がどのように変化したかを検証できるかにある。窓口時間短縮は、短縮自体を目的にするのではなく、窓口や電話、オンライン、郵送、支所・出張所等を含む行政サービス全体を再設計する契機として位置付ける必要がある。したがって、窓口時間短縮を持続的な行政改革につなげるためには、政策目的、確保時間の使途、代替手段、例外対応及び評価指標を一体的に設計し、試行と検証を通じて運用を継続的に改善することが重要である。
また、窓口短縮実施に向けて求められる観点やポイントは、「単なる"営業時間変更"で終わらせない窓口開庁時間短縮のすゝめー全国179事例の調査結果を踏まえた考察」『地方財務(2026年3月号)』で整理しているため、併せてご覧いただきたい。
なお、今回の調査結果(一次データ等)の情報提供含め、本取組の検討において筆者が力になれることがあれば気軽にご連絡いただきたい。
松田睦己(まつだむつき)
日本政策総研 研究員
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