レポート・コラム

【経済トピックスNo.15】変化するサービス収支の構図(宮脇淳)(2026年5月11日)

変化するサービス収支の構図

 工業製品等モノの対外取引(輸出入)による黒字・赤字を示す貿易収支は、日本経済において常に注目されてきました。なぜならば、日本は戦後、工業製品を中心とするモノの対外取引で高成長してきたからです。大量生産・大量物流・大量消費の時代です。
 しかし、2010年以降このモノ中心の構図に変化が生じています。それはモノの輸出入と並び、海外とのサービス取引の重要性が高まったことです。サービスの対外取引による黒字・赤字を示すデータとして国際収支の中の「サービス収支」があります。
 図1は、2000年以降の日本のサービス収支の動向を示します。「輸送」は航空機や船舶による旅客・モノの運賃代金収支を示し若干の赤字レベルで推移しています。それに対し、2010年以降変化しているのが「旅行」と「その他」です。「旅行」はインバウンドの増加により同じ2010年代半ばから黒字化しています。コロナ感染のパンデミックによる一時的減少を経て、20年代には黒字化が定着しています。
 一方で大きく減少しているのが「その他」です。「その他」は、知的財産権や通信ビジネス等に関する取引収支です。近年急成長しているAI、デジタル化に伴う情報サービス、ソフト使用料などが含まれる収支で大きく赤字となっています。日本から海外への支払いが増加していることを意味します。

(資料)財務省「国際収支統計」

 図1の「その他サービス」の内訳について詳細を見てみます。図2で示されるように工業所有権等「知的財産権」、「通信、情報コンピュータビジネス」「その他」へさらに分かれます。「知的財産権」は、特許権など産業財産権使用料、そしてオペレーティングシステムプログラムや映画・音楽等著作権使用料が含まれます。産業財産権使用料は黒字化しており、国際経済社会の中で競争力を持つことが示されています。一方でオペレーティングシステムやコンピュータプログラミング等の使用料分野は赤字化しています。
 さらに「通信、情報・コンピュータサービス」が2010年以降徐々に赤字化し、20年以降赤字幅が拡大しています。加えて、大きく赤字化しているのが「その他サービス」です。その他サービスは、「研究開発」、「専門・経営コンサルティング」等で構成されています。

 (資料)財務省「国際収支統計」

 以上のように、日本の対外取引はソフト化が進むと共に赤字化も加速しています。これまでのモノ社会では工業製品に加えてエネルギー資源などが国際収支動向に大きな影響を与えました。こうした点に加えて、観光、プログラム、著作物等ソフト面が国際収支に大きな影響を与える構図となっています。地方自治体が活用するプログラム等ソフト面でも対外支払いが拡大しています。

宮脇淳(みやわきあつし)
株式会社日本政策総研代表取締役社長
北海道大学名誉教授

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