レポート・コラム

【経済トピックスNo.3】2025年1-3月期米国経済減速(宮脇淳)(2025年5月20日)

【経済トピックスNo.3】2025年1-3月期米国経済減速

 米国経済2025年1-3月期の実質GDP前期比年率はマイナス0.3%減となり、経済に急ブレーキが生じる結果となった(図1)。ブレーキの主因は輸入にある。トランプ政権の関税政策が不透明なことから、企業の商品輸入を中心に関税引上げ前の駆け込み輸入が生じたことによる(図2)。国内経済規模を示すGDP(国内総生産)では、輸入は国内経済規模からの控除項目となるため、米国経済規模を縮小する方向に影響する。1-3月期の数字は、トランプ政権の関税増税自体の直接的影響は、年後半にならないと明確にならない。
 商品輸入が急増する一方で、国内経済の大きなウェートを占める消費活動はプラス成長ではあるものの大きく減速している(図1)。とくに、家電製品や自動車等の耐久財消費がマイナスとなっている。トランプ政権の関税政策による将来不透明感の高まり、インフレ圧力の増大懸念から消費を抑制する傾向が強まっていることが分かる。サービス消費は横ばい圏であるものの、弱含む傾向を見せている。
 以上の関税政策と消費動向を反映し、米国小売大手のウォルマート・インクは今後の売上予測等が困難とし提示した経営計画を撤回、米国Amazonは前倒しで商品在庫を拡大させたものの、一時的な対処療法に過ぎないとしている。FRBも年前半はトランプ政権の関税政策等の影響を見極める必要があるとし、金利引下げを見送っている。多くの企業も今後の設備投資や生産計画等を描く点で困難な環境にある。
 こうした影響は日本経済にも及んでおり、国内企業の景況感が年明け以降急速に悪化している。更新やデジタルの設備投資、インバウンド需要等から企業投資は堅調なものの、世界経済の不透明感から半導体需要も混沌状況にあり、設備投資の計画が描きづらくなっている。一方で、米中貿易摩擦を中心に世界のサプライチェーンの変化が生じており、こうした変化の中で日本経済がハブ的役割を独自に果たせるか新たなチャンスとして重要となる。

宮脇淳(みやわきあつし)
株式会社日本政策総研代表取締役社長
北海道大学名誉教授

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