【経済データを見る眼】OECDが世界経済見通し(改訂版)を公表(2022年10月12日)
OECDが世界経済見通し(改訂版)を公表
国際経済開発機構(以下、OECD)が、世界経済見通し(改訂版)を公表した。
【世界経済と主な地域の経済成長率見通し】
発表によると、2022年の世界経済全体の成長率は3.0%と前回発表時(6月)から据え置き。観光業等で経済再開の恩恵を受けた国やエネルギー等の資源輸出国については上方修正された一方、高インフレ環境が続きFRBによる金融環境の引き締めが続く米国や、ゼロコロナ政策により経済再開がストップ&ゴーとならざるを得なかったことに加え、不動産不安が高まっている中国は下方修正された。
2023年の見通しは、世界全体で6月時点の2.8%から2.2%へ大幅に下方修正された。ウクライナ紛争に端を発する食糧・エネルギー高を背景に苦しむ欧州や、賃金上昇などより粘着性の高いインフレが発生するなか、FRBが今後も利上げを継続する姿勢をしている米国の成長率が大きく引き下げられた。
【OECD見通しの推移】
成長率見通しの推移をみると、コロナ禍からの回復が見込まれ高い経済成長率が予測されていたものの、オミクロン株の発生による供給制約の長期化や、ウクライナ紛争等を背景とするインフレ率の上昇を要因に、昨年の夏をピークに景気回復の腰折れが警戒され世界経済の見通しは引き下げが継続している。
【インフレ率予想】
経済成長の大きな下押し要因となっているインフレ率の上昇について、OECDは各国中銀による政策金利の引上げや景気鈍化を背景とし、2022年がピークとなり2023年には多くの国で低下傾向に向かうとしている。ただし、その低下は緩やかなものであり高止まり傾向が続くため、引き締め的な金融政策を継続しつつ、一時的で的を絞った財政政策での救済措置を提言している。
今回見通しが大きく引き下げられたが、2023年の世界経済についてはOECDの見通しを更に下回る可能性があると考えている。足元、ロシアによるウクライナ東部併合の動きをみせており、ウクライナ問題がさらに泥沼化し欧州におけるエネルギー問題はさらに悪化し、ユーロ圏経済は下押しするであろう。また、米国ではFRBの金融引き締め強化を嫌気し、資産価格の急落が発生しており、逆資産効果による過度な消費の冷え込みが警戒されることに加え、中間選挙の結果次第では政治的な不透明感が高まり成長率の下押し要因となるであろう。加えて、日本においても、世界的に経済成長が鈍化する中でさらに円安が進むようであれば、外需による円安のメリットよりも、交易条件の悪化に伴うデメリットが経済成長率を更に下押ししうる点には注意が必要である。
村井慎吾(むらいしんご)
日本政策総研上席主任研究員